はじめに
「どうすれば人に伝わるのか」という疑問は誰しもが抱くと思います.私もわかりやすいプレゼン資料を作ろうとして様々なテクニックを調べて真似していましたが,最終的に「わかりやすさ」とは何かわからなくなってしまいました.そこでより根本的な核となる部分が知りたいと思い本書を手に取りました.
概要
本書では人に何かを伝えるための手法が単純明快に述べられています.難しい理論などはなく読むのに時間もかからないので,すぐにでも仕事や日常生活の場で活かすことができると思います.
著者は「相手に動いてもらうこと」が伝えることの目的であるとしています.これを達成するためには聞き手が納得できる「ロジック」はもちろん,聞き手の「感情」に訴えかける必要があります.前半は「ロジック」の組み立て方,後半は「感情」を揺さぶる方法および聞き手に動いてもらう方法について書かれています.
タイトルにある「1分で」というのは制限時間ではなく,1分もあれば伝えることができる(相手を動かすことができる)というニュアンスだと考えます.文中にも「どんな話でも1分で伝えることはできる」とあります.
本書には伝え方の基本が凝縮されているため,様々な場面で活用することができると思います.
特に印象的だったポイントを以下に紹介します.
3段のピラミッド
結論,根拠,事実からなるピラミッドを作ることでロジカルなストーリーを組み立てることができます.ピラミッドの頂点には結論があり,その下に説得力をもたせるための根拠が3つあり,さらにそれぞれの根拠の下に事実が2つずつぶら下がっています.このピラミッドを構築することで後々伝えたいことがぶれなくなります.
ピラミッドを構築するにあたり,まずは頂点となる結論を出す必要があります.結論を出すためには次項で述べる「考える」ことが重要になります.
考える=結論を出す
「考える」とは、「自分の中にあるデータや自分の外にあるデータを加工しながら、結論を導き出すこと」
伊藤 羊一. 1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.347-348). Kindle 版.
私が本書で最も印象に残ったのはこの部分です.
今まで私は思考の無限ループに陥ることが何度もありました.この現象は特にネガティブなことについて考え始めたときに顕著に現れました.その全てに共通するのは結論を出していないということです.結論を出せずに頭の中で同じことを何度も考え続けていたため,問題の解決に向かって動き出すことができませんでした.
著者は結論を出せずに頭の中でずっと考えが巡っている状態を「悩んでいる状態」と述べています.私自身は必死に考えているつもりでしたが,結局ただ悩んでいただけということになります.
「悩んで」いても結論は出てきません。この「無限ループ」を避けるためにも、機械的に「考える」=結論を出す習慣をつくるのです。そのために自分に問う。黄金の質問は、「だから何?」「ファイナルアンサー?」「本当か?」です。
伊藤 羊一. 1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.382-384). Kindle 版.
この状態から脱却するために著者は機械的に「考える」習慣を作ることを推奨しています.様々な要素を勘案すると無限ループに陥りやすくなると思うので,まずはとにかく結論を出すことを意識するのが良いと思います.
徹底的に準備する
伝えるのに必要な時間は1分ですが,その準備には時間を惜しんではいけません.
「相手を動かすためにできることは全部やる」ということは、そのための準備も徹底的にやりきるということです。
伊藤 羊一. 1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1102-1103). Kindle 版.
私は資料の出来にこだわって時間をかけすぎてしまい,ほぼぶっつけ本番で発表に臨むことがよくあります.しかし,それではやはり準備不足です.資料や話し方,身振り手振りなど事前に確認し検討できることはすべてやりきるべきです.そのためにも情熱を持って準備に取り組む必要があります.
「これから伝えようとしていることは、自分が一番詳しいし、自分はそのコンテンツに一番自信を持っているし、一番好きだ」くらい強い思いを持ち、その思いを聞き手にぶつけることが不可欠です。
伊藤 羊一. 1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1076-1078). Kindle 版.
局所的にこだわりだすと止まらなくなることもあると思うので,何にどれだけ時間を割くかの目安をある程度つけておくのも良いかと思います.
おわりに
他にも「なるほど!」となるようなポイントはたくさんあります.冒頭にも述べましたが,すぐにでも活用できる内容ばかりなのでぜひ読んでみてください.
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