著者について
著者の落合陽一氏はメディアアーティスト,筑波大学教員,実業家など多くの肩書を持ち,多方面で活躍されている方です.
私はTwitterで落合氏を知りました.夜通し作業やプログラミングをしつつテレビ番組にも出演されており,多忙な方だという印象を持っていました.
そんな落合氏がどのような考えを持っているのか気になったのでこの本を読みました.
魔法の世紀
著者は20世紀を「映像の世紀」とするならば,これから訪れる時代は「魔法の世紀」であると述べています.
どのように「魔法の世紀」へ転換していくのか,現在どのような変化が起きているのかをコンピュータ発達の歴史や自身の作品を踏まえて述べています.
本書で述べられる「魔法の世紀」で実現することはどれもSFのようですが,いずれも根拠があり納得出来ます.その根拠が著者が制作したメディアアートとなっているため説得力があり,大変面白いと思いました.
デジタルネイチャー
本書におけるキーワードの1つが「デジタルネイチャー」です.「魔法の世紀」が21世紀という「時代」を表した言葉なら,21世紀の「世界」を表した言葉が「デジタルネイチャー」であると述べられています.
デジタルネイチャーの時代にはすべてがコードによって記述されメディアはその都度生成されます.また世界にとって人間はアクチュエータに過ぎず,例えば人工知能の指示どおりに接客を行うようなインターフェースとして残っていきます.
さらに,生物の遺伝子をプログラミングし生まれた生命を3Dにプリントアウトすることで,キラキラ輝くショウジョウバエや街灯の代わりの植物のような不可思議な生物が実在するようになる可能性もあります.
突飛な話に聞こえるかもしれませんが,本書を読み終えた後には決して絵空事ではないということがわかると思います.
メディアアーティスト
また,本書ではメディアアート,メディアアーティストとは何かについても語られています.
私はメディアアーティストに対して「テクノロジーを駆使してエモいものを作っている人」というイメージしかありませんでした.
しかし,この本を読んでメディアアートの役割の一つは鑑賞する人に未来の可能性を示すことだと思いました.
メディアアートは見るだけでも面白いですが,その作品の意義を知ることでより楽しめると思います.
学生の立場から
学生の立場からは線形代数やプログラミングに関する知識の重要性を感じました.これから訪れる未来でエンジニアとして何ができるか,どのようなスキルが必要になるかを考える必要があると思いました.
本書でも引用されていますが,SF作家アーサー・C・クラークが遺した「発達した科学技術は,魔法と見分けがつかない」という言葉の意味がよくわかる一冊でした.
コメント