低予算で大ヒットした映画と聞くと2017年公開の「カメラを止めるな!」が思い浮かぶ。
それもあって、あっと驚く大きな仕掛けがあるのではと期待していた。いつその瞬間が来るのか構えていたが気づけば物語に引き込まれて涙を流していた。
会津藩の侍、高坂新左衛門(こうさかしんざえもん)は決闘の最中、雷に打たれ現代の時代劇撮影現場にタイムスリップした。
忠誠を誓っていた江戸幕府がすでに滅んだことを知り一度は絶望するも、時代劇の切られ役として新たな人生を歩む。
タイムスリップ関連のすれ違いやごたごたが程よく省略されておりテンポが良かった。
侍にとっても馴染み深いであろう寺に居候することで、現代社会へ適合する過程をうまく省略しているように思う。
その分、時代劇の切られ役にしっかりスポットを当てていた。
新左衛門は現代で生計を立てる唯一の手段として自らの意思で役者になり、実際の剣術と殺陣との違いに戸惑いながらも切られ役として実力をつけていく。
時代劇に対してまっすぐ向き合った作品だった。
ドタバタコメディ的な展開が続くかと思ったが、実直な侍である新左衛門は切られ役の稽古にもひたむきに打ち込む。それゆえ中盤は事態が急転することが少なく盛り上がりに欠ける印象があった。
しかし新左衛門をはじめとして殺陣師の関本、助監督の山本優子、ベテラン俳優の風見恭一郎など時代劇の作り手が真摯に撮影に取り組む様子が描かれたことでラストシーンの魅力が増大していると思う。
制作陣の時代劇に対する想い、そして侍としての生き様が語られたうえで迎えたラストの剣戟シーンはまさに「死合」であり、特徴的な演出も相まって息が詰まるほどの緊張感と興奮を覚えた。時代劇でこれほど胸が熱くなるとは思わなかった。
余談
危険な撮影に臨むときに現場に漂っていた「いけそう感」は事故が起こるときのそれだと思った。万が一に備えて医療班を用意してはいるが、監督を筆頭にチーム全体が興奮して冷静に判断できていないようだった。待ったをかける人もいたが監督は聞き入れず撮影は強行された。もし現実であのような状況になったら事故が起きても不思議でないと思った。
スタッフロールに何度も監督の名前が出てきて、本当に予算に余裕がなさそうだと感じた。
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