アメリカで起きた内戦を描いたフィクションだが、そのうち実現してもおかしくないと思った。観終えた後うっすら不安と恐怖が残りしばらく動悸が続いた。
もし現実になったら日本も無関係ではいられない。米国株とかNISAとか大丈夫かなと心配になった。
ジャーナリストたちのロードムービー
独裁的な大統領により分断が進み、テキサス州とカリフォルニア州の同盟軍(西部勢力)と政府軍との間で内戦が勃発した。政府軍の本拠地ワシントンD.C.が陥落寸前の状況で、4人のジャーナリストたちが大統領へのインタビューを目的に命がけでホワイトハウスを目指す。
ベテラン戦場カメラマン、リー・スミス
記者のジョエル
リーの師匠である老齢の記者サミー
リー憧れる新米写真家ジェシー・カレン
この4人で内戦状態のアメリカを旅する。
現代の戦争
内戦の描写が、最近の報道で見かけるウクライナや中東の様子とそっくりだった。戦場は草原とかジャングルとか砂埃が舞う荒地ではなく、一般市民が暮らす市街地である。
砲撃で損壊した建物、道路に放置された弾痕が残る車、道端に転がる死体、夜空に輝くミサイル、どれもニュースで見たことがある。
ウクライナ侵攻が始まったばかりのころは戦争が一気に身近になったような気がした。「これが現代の戦争なのか」と衝撃を受けた。
その時の感覚が蘇り、とてもフィクションには思えなかった。
最前線だけでなくアメリカのいたるところで悲劇が起きる。群衆を狙った自爆テロ、窃盗犯の吊し上げ、市民の虐殺など。モラルは無く暴力によって人命が軽く扱われており、リアリティもあって気味が悪かった。
銃声
重くて迫力のある銃声が怖い。
映画館の音響だと迫力が凄まじい。銃声が聞こえると劇中の人物と同じく身を屈めたくなる。
武器を持たないジャーナリストが、銃を携える人と会話する場面は手に汗握る。
リーたちは道中、銃を持つ人と何度も対峙する。中には素性や目的がはっきりわからない人もいる。彼らがいつ引き金を引くのかわからない恐怖がある。質問に対しどう答えれば機嫌を損ねないかも判断できない。生殺与奪の権を握られている理不尽な状況。劇場でも緊張感が漂っていた。
恐ろしい銃声とは反対に劇中で流れる曲はポップなものばかりだった。そのギャップが不気味であった。
戦場カメラマン
リーをはじめとする戦場カメラマンは銃撃戦の中、兵士たちのすぐ後ろについて移動し写真を撮る。
「PRESS」と掲げていても構わず撃たれる状況であり本当に命がけである。
戦場カメラマンと兵士がほとんど同じ動きをしていたのが印象的だった。
異なるのは持っているものがカメラか銃かだけ。(なんならカメラマンのほうが防具が少なかった)
物陰に隠れ、隙を見て身を乗り出しカメラを向けシャッターを切る。あるいは銃を向けて引き金を引く。
銃を撃つのも写真を撮るのも英語だと「shoot」だが確かに近いものがあると思った
作中でリーたちが撮った白黒の写真がシャッター音とともに映される演出が印象に残った。
ラストに映された一枚は歴史に残る一枚になるだろう。
コメント